キャンセルと後処理
ストリームの停止方法
iterate(source, { signal }) で取得できる StreamIterator で、実行を停止したり、クリーンアップの完了を待ったりできます。
| メソッド / プロパティ | 挙動 |
|---|---|
iterator.cancel(reason) | 即時停止を要求し、各ステージの AbortSignal を abort する。待機中の next() はクリーンアップ完了を待たずに即座に reject される。 |
iterator.return() | 停止を要求し、各ステージの AbortSignal を abort する。上流のクリーンアップと finalize の完了を待つ。 |
iterator.throw(error) | 失敗による停止を要求し、クリーンアップ完了を待たずに reject する(上流ジェネレータの .throw() へは転送しない)。 |
iterator.closed | すべてのクリーンアップ完了後に CloseReport で必ず解決する Promise。 |
1つの StreamIterator に対して同時に待機できる next() は1つだけです。並行して2つ目の next() を呼ぶと TypeError で reject されます。エラーまたはキャンセルが発生すると、待機中の next()(または次の1回の next())がその理由で reject され、以降のすべての next() は { done: true, value: undefined } で解決します。
return() は正常に終了すると { done: true, value: undefined } で解決し、クリーンアップだけが失敗した場合も含め、実行が失敗していれば主エラーで reject します。キャンセル後はクリーンアップが失敗しても { done: true, value: undefined } で解決し、そのエラーは closed の解決値の suppressedErrors に残ります。
後から throw(error) を呼んでも、すでに確定したキャンセル理由や主エラーが優先されます。throw() の後に後処理の完了を待つには、closed を await してください。
import { defer, finalize, iterate } from "mogami-stream";
export async function readOne(signal: AbortSignal) {
const source = defer(({ signal }) =>
(async function* () {
const response = await fetch("https://example.com/data", { signal });
if (!response.ok) {
await response.body?.cancel();
throw new Error(`HTTP ${response.status}`);
}
yield await response.text();
})(),
).pipe(finalize(() => console.log("cleanup complete")));
const iterator = iterate(source, { signal });
try {
return await iterator.next();
} finally {
try {
await iterator.return();
} finally {
const report = await iterator.closed;
if (report.kind !== "completed") console.error(report.reason);
for (const error of report.suppressedErrors) console.error(error);
}
}
}AbortSignal による協調的キャンセル
JavaScript の非同期イテレータは、任意の await を外部から強制終了できません。cancel()、return()、take(n)、または外部 AbortSignal によってステージが停止する際、mogami-stream は defer や各オペレータ(map、filter、forEach など)のコールバックに渡している signal を abort します。
fetch、ファイル I/O、DB クエリ、タイマーなどの外部 I/O には必ずこの signal を渡してください。I/O 側が signal を無視して完了しない場合、return()、closed、および終端コンシューマはその処理が終わるまで待機し続けます。
finalize の実行順序と take(n) のクローズタイミング
finalize(effect) はステージの終了時に実行される同期・非同期のクリーンアップ処理を登録します。
- 登録した関数はそのステージが開始された場合(少なくとも1回
next()が到達した場合)に限り、実行ごとに1回だけ呼ばれます。 - 上流の子ステージのクローズと、そのステージ内の進行中タスクがすべて完了した後に実行され、戻り値の Promise も完了まで await されます。
- パイプライン内で複数の
finalizeがネストしている場合、内側(上流側)から外側(下流側)の順に実行されます。
take(n) は n 件目の要素を受け取ると、その要素を下流へ渡す前に上流ステージを閉じ始めます。このとき下流ステージの signal は有効なまま維持されるため、下流のオペレータやコンシューマは最後の n 件目の要素を正常に処理できます。
ジェネレータでリソースを管理する
defer で実行ごとに新しいジェネレータを作り、取得と解放を try/finally にまとめます。
import { defer, take } from "mogami-stream";
interface Cursor<T> {
rows(options: { signal: AbortSignal }): AsyncIterable<T>;
close(): Promise<void>;
}
export async function readFirstRows<T>(
openCursor: (options: { signal: AbortSignal }) => Promise<Cursor<T>>,
signal: AbortSignal,
) {
const pages = defer(({ signal }) =>
(async function* () {
const cursor = await openCursor({ signal });
try {
yield* cursor.rows({ signal });
} finally {
await cursor.close();
}
})(),
);
const runA = await pages.pipe(take(10)).toArray({ signal });
const runB = await pages.pipe(take(10)).toArray({ signal });
return { runA, runB };
}各実行は最初の読み取りでカーソルを開き、正常終了・失敗・早期終了時に閉じます。行の読み取りにも signal を渡してください。取得が途中で失敗した場合の解放は openCursor 側で行います。
非同期の準備処理でリソースを管理する
defer のファクトリと catchError のハンドラは signal と acquire(acquire, release) を持つ ResourceContext を受け取ります。ソースを返す前にカーソル、セッション、ファイルなどを開く場合は acquire を使います。
import { catchError, defer } from "mogami-stream";
interface Cursor {
read(signal: AbortSignal): Promise<IteratorResult<string>>;
close(): Promise<void>;
}
type OpenCursor = (signal: AbortSignal) => Promise<Cursor>;
// The source borrows the cursor. Only the registered release callback closes it.
async function* rows(cursor: Cursor, signal: AbortSignal) {
while (true) {
const result = await cursor.read(signal);
if (result.done) return;
yield result.value;
}
}
export function readWithFallback(
openCursor: OpenCursor,
openBackup: OpenCursor,
) {
return defer(async ({ signal, acquire }) => {
const cursor = await acquire(openCursor, (cursor) => cursor.close());
return rows(cursor, signal);
}).pipe(
catchError(async (_error, { signal, acquire }) => {
const backup = await acquire(openBackup, (cursor) => cursor.close());
return rows(backup, signal);
}),
);
}取得と解放のタイミング
ファクトリまたはハンドラの実行中に context.acquire を呼び、await してください。取得用のコールバックにはステージの signal が渡されます。取得を始める前にステージが停止していれば、コールバックは呼ばれません。
取得に成功すると、キャンセルの確認より先に release(resource) が登録されます。そのため、キャンセル後に取得が完了したリソースも解放されます。この場合、acquire の Promise はキャンセル理由で reject し、ソースは開かれません。
完了・失敗・途中終了のいずれでも、子ソースが閉じ、ステージ内で実行中の処理が終わった後に、登録された解放処理をそれぞれ1回だけ呼びます。解放処理は登録と逆の順序で実行され、closed と終端コンシューマはその完了を待ち、取得や解放が完了しなければ後処理も待機し続けます。ファクトリまたはハンドラの処理が終わった後は、そのコンテキストで新たな取得を始められません。
取得・解放時のエラー
取得に失敗すると、そのリソースを所有するステージが失敗します。上流の defer で起きた失敗は catchError で処理できます。取得用のコールバックが例外を投げる場合、途中まで確保したリソースの解放はそのコールバックの責任です。
解放時のエラーには後処理のエラー優先順位が適用されます。
所有権と二重解放
取得に成功した acquire の呼び出しごとに、ステージがリソースを所有します。返すソースはそのリソースを借りて使うため、イテレータの return() や finally で重ねて解放しないでください。例の rows ジェネレータは独立して閉じ、その後で登録済みのコールバックがカーソルを閉じます。同じリソースを二重に登録しないでください。
すでに開いたイテレータを扱う場合は、その return() を解放処理として登録します。そのイテレータ自体を返す代わりに、next() を呼び出すソースを返し、解放を登録済みの処理に任せます。
通常のソースを返す場合、ライブラリがそのイテレータを所有するのは、ソースを開いた後です。キャンセル後に返された通常のソースは調べることも、開くことも、閉じることもしません。イテレータの取得によって、別の処理が始まる可能性があるためです。ファクトリやハンドラが直接確保したリソースは、所有権を明示的に登録するまで、そのコールバックが管理します。
CloseReport の構造とエラー優先順位
iterator.closed は後処理の完了後に終了状態を返します。エラー処理で CloseReport の構造とエラーの優先順位を説明しています。
catchError によるエラー回復境界
上流の失敗から代替ソースへ切り替える方法と、捕捉できるエラーの範囲は、エラー処理の catchErrorを参照してください。
終端の結果と終了報告を取得する
結果と副次的なエラーをまとめて取得する方法は終端の結果と終了報告のレシピを参照してください。タイムアウト通知と後処理の完了を分ける例もあります。